こんにちは。平岡旗製造株式会社 代表の平岡です。
このたび私たちは、祇園祭史上初めてとなる「山鉾巡行の順番が入った手拭い」を、商品化いたしました。
なぜ、今までこのような手拭いがなかったのか?
そして、なぜ山鉾巡行の順番を決めるくじ取り式が大切なのか?
販売開始にあたり、魅力とともにお伝えしたいと思います。
祇園祭では34基のうち10基が「くじ取らず」としてあらかじめ順番が決まっています。残り24基は毎年くじで順番を決定。前祭り・後祭り全ての組み合わせは「26兆通り」にのぼり、毎年まったく異なる巡行順が生まれます。
この手拭いは、その年だけの唯一無二の巡行順を記録した貴重なアイテムですので、巡行順と山鉾名が一目瞭然となるよう心がけ、且つデザイン性も損なうことのない意匠づくりを目指しました。
中央にあるイラストは、巡行日(前祭17日、後祭24日)に行われる実際の「くじ改め」を表現しております。

幼い頃から親しんだ祇園祭
私の生家は山鉾町にあり、幼い頃から祇園祭に深く関わってきました。若い頃は「お祭り=楽しい行事」という印象でしたが、大人になるにつれ、神事としての奥深さと地域の誇りを強く感じるようになりました。
「くじ取り式」は町内最大の関心事
山鉾巡行の順番を決定する「くじ取り式」は、毎年7月2日午前9時、京都市役所 市会議場にて行われます。各山鉾町の代表者が集まり、まず「予備くじ」で本くじを引く順番を決定。その後、本くじによって正式な巡行順が決まります。
なかでも注目されるのが「山一番」の座。先頭は長刀鉾と決まっていますが、山一番はくじで決まり、その年もっとも「ご利益がある山」として町内に歓喜が広がります。
巡行当日は、実際にくじの順に並んでいるかを確認する「くじ改め」が行われ、儀式に携わる者は町の誇りとされています。
私と郭巨山の「くじ運」
私が所属する郭巨山では、過去10年間で2年連続「山一番」を引いたことがあります。もし3年連続なら史上初の快挙でしたが、3回目は惜しくも逃しました。
ちなみに、私がこれまで引いたくじの結果は「9番・8番・11番・12番」。14基中の順位なのでなかなかの「くじ運」のなさを物語っておりますが、いつか「山一番」を引いてみたいものです。
手拭いは古来より、神事の衣装や縁起物として使われてきました。お神輿の担ぎ手が身につけたり、寺社の紋をあしらった記念品や厄除けとしても用いられます。
祇園祭では毎年、各山鉾町がオリジナルデザインの手拭いを制作・販売しています。そのデザインは山鉾の由来や装飾をモチーフにしたもので、祭の風物詩となっています。
しかし、これまで「山鉾巡行の順番が記された手拭い」は存在しませんでした。というのも、巡行順が決まるのは7月2日で、巡行は7月17日。制作には極めて短い期間しかなく、実現が困難だったのです。
印刷などの技術進化に伴い、高品質短納期をクリアできるようになりました。そこでかねてから試行錯誤していた『巡行順入りの手拭い』のアイデアと、デザイン、そして技術のすべての足並みが揃った今、ついに商品化できることとなりました。
令和7年限定で、予約販売も含めて数量はわずか 3,000枚限り。巡行前日の7月16日までに発送できるよう準備を進めています。
応仁の乱後の1500年に復活した山鉾巡行では、先陣争いを避けるため、くじで順番を決定する方式が採用されました。現在は京都市会議場で非公開にて執り行われ、京都市長も立ち会う由緒ある神事です。
前祭:長刀鉾、函谷鉾、放下鉾、岩戸山、船鉾
後祭:橋弁慶山、北観音山、南観音山、鷹山、大船鉾
巡行当日、実際にくじで決まった順番に並んでいるかを確認する儀式。四条烏丸付近で行われ、祇園祭の重要な見どころのひとつです。
くじ取り式で引かれたくじを納める木箱。
各鉾町へ大切に持ち帰られ、厳かに保管されます。