ホテル入口に“祭の華”を──祇園祭限定・特別なのれんができるまで
今回の更新テーマは、のれんの製作事例です。
昨年初夏、イビススタイルズ京都四条様よりご用命いただき、エントランス入口に掲げるのれんを作製させていただきました。
その過程をご紹介いたします。
イビススタイルズ京都四条様は、弊社のお隣に位置するホテルです。
和風とモダンの合わさった素敵な内装に加え、人気観光地へのアクセスもよいため海外からの観光客にたいへん人気です。
弊社とは同じ郭巨山町に所在するお隣同士で、祇園祭や町内の行事のたびにお世話になっているご縁で今回のお話をくださったのでした。
2つある入口のうち、膏薬辻子(こうやくのずし)に面した入口は木造の日本家屋風になっており、筆文字で「いびすすたいるず」と名前の入った看板灯籠が出迎えてくれます。
日本中、世界中に広く展開されている中でも、このように和風建築の要素を取り入れていらっしゃるのは京都四条店様のみ。
今回ご紹介するのは、この入口に掲げられる特別なのれんです。
ホテル様とのお話し合いで決まったテーマは、
- 祇園祭がモチーフの、7月限定の特別デザイン
- フォトスポットとしてSNS上にPRできる、華やかなデザインにしたい。
というもの。
京都観光を楽しみに来られた方に「京都に来たぞ!」と実感して頂けるよう、象徴的なモチーフで製作することになりました。
山鉾巡行 郭巨山ののれん
今回は、一緒に郭巨山を盛り上げる仲間であるイビススタイルズ様のために郭巨山が主役ののれんを作らせていただくことになりました。
この場所を通る人が思わず注目してしまうような、美しく迫力のあるのれんを目指します。
①原案・下絵制作
まず、のれんの絵柄を制作するにあたり、全体の構図を決定します。
構図の決定、デザインの調整は私 上田が担当しました。
過去の巡行の様子をとらえたたくさんの資料写真から、郭巨山の最もかっこよく映える角度を探します。


上の写真は膨大な資料のごく一部。
郭巨山に長く関わっていらっしゃる町内の皆様からお知恵を頂きつつ検討を重ね、右の画像のようなこちらに迫ってくる構図で作製することが決まりました。
構図が決定したら、細かい描き込みの内容を詰めてゆきます。
絵柄の清書は京都の工房にいらっしゃる手描き友禅の職人さんにお願いしますので、職人さんの為にも、のれんの為にも、下手な下絵は作れません。
社内に所蔵しているもの、町内の皆様にお借りしたもの、たくさんの資料と睨みあいながら郭巨山の姿を極力忠実に描き起こしました。
また、実際の風景写真をそのまま写し取るのではなく、より見応えのある絵柄になるよう、山本体の描写だけでなく人物の衣装や配置にも少し工夫を加えていきます。
②絵付け本番
下の写真は、手描き友禅職人さんの作業風景を撮らせていただいたものです。
無地ののれんに、下絵に沿って線が入った段階です。



真木の葉や懸装品の部分は、後に色が入ることを計算しながら繊細な線で描かれています。
※一般的には、染め→仕立ての順番で製作しますが、今回は絵柄がたいへん細かく複雑なため、先に仕立て→絵付けの順に変更しました。
これにより、継ぎ目の部分に違和感のない美しい絵柄に仕上げていただくことができました。
手描き友禅は、友禅のなかでも特に古い手法であり、名の通り人の手で一筆一筆色を挿してゆく繊細な技法です。
筆の扱い次第でぼかしやグラデーションなどの表現も可能で、金銀の箔や粉を用いれば豪華でありながら気品に満ちた仕上がりになります。
熟練の職人さんの技術はやはり素晴らしく、まっさらだったのれんの上に鮮やかで繊細な郭巨山の姿が描きだされてゆきました。



郭巨山の主役・郭巨さんと童子の人形も、表情や衣装の装飾まで鮮明に描いて頂きました。


〇約一ヶ月後……
絵付けが完了し、仕上がったのれんがこちらです。

私自身、プロの友禅職人さんの技術を目の当たりにしたのは初めてでした。
納品いただいた包みを開いたとたん大迫力の郭巨山が目に飛び込んで、声が出るほど驚いたのを覚えています。
郭巨山町の特色ある懸装品が余すことなく忠実に描かれ、先導旗に大きく描かれた「郭巨山」の名前が誇らしげに見えます。
京都の職人さんの技術の素晴らしさ、重要さが身にしみる体験でした。
出来上がったのれんはホテルスタッフの皆様も喜んでくださり、無事に店頭に掲げて頂くことができました。
こののれんは祇園祭の期間中、7/1〜7/31まで使用されます。
お近くにお越しの際は、ぜひぜひご覧くださいませ。
今回は、弊社の製作事例からのれんのご紹介でした。
弊社では、オリジナル商品のご相談をいつでもお待ちしております。
紺色一色のシンプルなものから、今回ご紹介したような華やかなデザインのものまで承りますので、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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今回のブログは上田が担当いたしました。